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臨床試験とは
治験と臨床試験の違い
臨床試験の探し方

Last Updated:2021-06-06 更新者:片木美穂

臨床試験とは

卵巣がんに効果があるかも!という新しい治療法が見つかった場合、それが本当に卵巣がんに効果があるのか、治療による副作用があるのかを調べる必要があります。
卵巣がんの新薬が承認されても、その新薬がすぐにガイドラインで標準治療になることはほとんどありません。
承認されたあとも既存の標準治療と比べて効果がどの程度違うのか、副作用の差があるのかなどを調べないと、医師はいつ・どのタイミングで新薬を患者さんに使えば良いのか判断できません。


そこで行われるのが「臨床試験」です。
臨床試験とはくすりの効果や副作用を確認するために行われるものです。
がんの治療薬の場合はがん患者さんに協力をしていただき臨床試験が行われます。
臨床試験には効果や副作用を正確に把握する・協力してくださる患者さんに不利益が起きないようにルールが設けられます。
このルールのことを 「プロトコル」と呼びます。
臨床試験は1人の医師や1つの病院だけで行われるとは限りません。
どこの病院であっても、どの医師であっても同じように行えるよう、プロトロコルには卵巣がんがどのような病気か、この臨床試験をどうして行う必要があるのか、臨床試験の対象となる患者さんの条件、万が一患者さんに重篤な副作用が起きた場合の補償などといった細かな事柄が記載されており、それを守って臨床試験は行われます。
臨床試験は、プロトコルに沿って行われるため患者さんにその内容をしっかり説明をすること、そして患者さんは臨床試験について十分な理解をしたうえで自発的同意をする必要があるということすなわち「インフォームドコンセント」が定められています。
臨床試験では患者さんが新薬を投与するのか既存の標準治療を受けるのかといった選択肢を決められない場合があったり、患者さんの都合で投与の日を変更することが難しいこと、データを取るために通院の負担が増える場合もあります。
日頃みなさんが病院の診察(診療)を受ける際には患者さんの希望も聴きながら患者さんにとってどうすることが最善であるかを考え治療計画が経てられていきますが臨床試験ではプロトコルに記載された内容が最も優先されることになるのです(左図)。
ですから、臨床試験に参加するには「みなさんが十分な説明をうけて(わからないことは質問をした上で)自発的な同意をする」必要があります。
もしも説明を聞いても決めることができない、臨床試験に参加するのは嫌だな、普通の標準治療を受けたいな・・・と言った場合には臨床試験の参加を断っても患者さんに不利益は起きないことがプロトコルにはきちんと定められているので断っても問題はありません。

臨床試験の結果、新薬が標準治療の結果をうわまわることもあれば、反対の結果に終わることも少なくありません。
新薬や新規治療の場合には予期せぬ副作用がでてしまう場合もあります。
臨床試験については安易に飛び付かず、しっかり説明を聞いた上で意思決定をするようにしましょう。

臨床試験のうち、日本で未承認の治療を国に承認してもらうために行う臨床試験を「治験」と呼びます。
治験を行い結果を国が承認した場合には多くの患者さんが使う可能性があるため、治験に定められているルールはとても厳しくなっています。
一方で承認後に患者さんにとってどの薬を使うと良いのかを調べる臨床試験は、より診療に近い形で行われるようになっています。

 

臨床試験は3つの段階に分けられています。

第Ⅰ相:健康な人で

ごく少ない量の「くすりの候補」から使い始め、だんだん量を増やしていき、副作用について注意深く調べます。抗がん剤の場合はがん患者さんが参加します。

第Ⅱ相:少数の患者さんで

「くすりの候補」が安全か、病気に対して効き目があるか、さらに使い方(使う量・期間・間隔など)を調べます。

第Ⅲ相:多数の患者さんで

最終的に、これまでの結果でわかった「くすりの候補」の効き目や副作用を調べ、標準的な使い方を確認します。

治験と臨床試験の違い

 治験(薬剤開発のための臨床試験)

  • 承認申請のための薬効評価を目指した厳密なデザイン
  • 厳しい患者選択除外基準(安全性と薬効評価)
  • 比較的短期間、小規模、 代替エンドポイント(サロゲートエンドポイント)
  • 研究計画書は依頼者(主に製薬企業)が作成
  • 信頼性とデータの正確さを担保する研究計画と実施体制を優先

臨床試験(医療現場の問題解決)

  • 現場の状況を反映させた、治療方針の比較を可能に する現実的なデザイン
  • 一般化を重視した患者選択除外基準
  • 比較的長期間、大規模、 真のエンドポイント(トゥルーエンドポイント)
  • 研究計画書は研究者が作成
  • 信頼性と結果の一般化可能性を重視、正確さの追求には限界

臨床試験の探し方

国立がん研究センターがん情報サービス「 LinkIcon がんの臨床試験を探す
 
国立保健医療科学院「 LinkIcon 臨床研究〔試験〕情報検索ポータルサイト


オンコロと国立がん研究センター東病院が連携してオンラインで治験担当医師に直接チャットで相談ができるシステムができました。登録することで国立がん研究センター東病院で行われている治験が検索でき相談ができるそうです。


 

気になる臨床試験をみつけたら

まずは印刷をして主治医に「的確基準(臨床試験に参加するための条件)」があなたに合っているか「除外基準(患者さんの安全等を守るために臨床試験に参加できない患者さんの条件)」からあなたが外れているか確認をしてもらいましょう。
そして、その臨床試験の目的なども確認してもらった上で、参加を検討してみてもよいのではないかということになったら主治医から問い合わせ窓口に打診をしてもらってください。
またその際に、検索した情報でわからないことや不安なことがあれば確認してもらいましょう。
患者さんやご家族が窓口に問い合わせても細かい確認が取れないために詳細を教えてもらえなかったり、参加を断られることもありますのでご注意ください。