ごあいさつ
卵巣がん体験者の会スマイリー
代表 : 片木 美穂
Ovarian Cancer Survivors' Group : SMILEY
Director : Miho Katagi
ブログ / Instagram
1. 卵巣がんの現状
卵巣がんは女性の婦人科がんの中で最も死亡者数が多く、2020年には12,738人が新たに診断され、2023年には5,154人が亡くなっています※1,2。
早期発見が難しく進行しやすいがんとして、患者さんとそのご家族にとって大きな不安材料となっています。
2. スマイリーについて
卵巣がん体験者の会スマイリーは、2006年9月1日に活動を開始した患者支援団体です。
当事者ならではの視点から、下記のようなケアと情報提供を行っています。
・相談支援活動(メール、電話、zoom)
・勉強会(年数回)
・おしゃべり会(年数回)
・情報発信(Twitter、Facebook、YouTube、Instagram、note)
3. 会員制廃止の背景
かつては会員制(有料)により運営を安定させていましたが、活動の可視性が下がり、本当に支援を必要とする方々に情報が届きにくい現状を感じていました。そこで2019年3月末をもって会員制を廃止し、現在は卵巣がん患者さんとご家族であればどなたでもご相談・ご参加いただける体制を整えています。
4. 理念と目標
私たちの理念
私たちの活動はすべて卵巣がん患者さんのために
(All Activities for Ovarian Cancer Patients)
私たちの目標
1. Engagement:繋ぐ
患者さんを「同じ病の仲間」「医療」「社会」とつなぎます
2. Empowerment:力づける
病気への理解を深め、意思決定やセカンドオピニオン取得をサポートします
3. Survivorship:ともに乗り越える
がんを経験した患者さんが、生活に直面する課題を、同じ経験をした人や家族、医療者とともに乗り越えていくこと
5. お問い合わせ・参加方法
ご相談やイベント参加のお申し込みについて、詳しくは公式ホームページをご覧ください。
• 公式ホームページ:https://ransougan.e-ryouiku.net/
卵巣がんと向き合うすべての方が一人で悩まず、安心して歩んでいけるよう、スマイリーはこれからも寄り添い続けます。
1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
2 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)
Remembering Dicey
Mary “Dicey” Jackson Scroggins の歩みと功績
In My Sister’s Care の設立と目的
1990年代、医療サービスを十分に受けられない女性たち、特に移民やマイノリティに対して正確な婦人科がん情報の提供と意識向上を図るために、Dicey は「In My Sister’s Care」を立ち上げました。
この組織では、診断から治療までのサポート体制づくりを推進し、健康格差の解消を目指しました。
IGCS(世界婦人科がん協会)での活動
Dicey は International Gynecologic Cancer Society(IGCS)の理事としても活躍しました。患者の立場から、国際的な婦人科がん臨床試験を企画・運営し、医療者と患者の間に立って情報やニーズをつなぐ役割を果たしました。
闘病と訃報
Dicey は卵巣がんの診断から26年目を迎える直前、2022年8月1日に永眠しました。2021年1月には急性骨髄性白血病(AML)と診断され治療に臨んでいました。
卵巣がん体験者の会スマイリーとの絆
- Diceyは2006年9月1日のスマイリー設立直後から片木美穂(Miho Katagi)に対して患者会運営や組織づくり、医療者とのネットワーク構築について熱心にアドバイスをしてくれました。
- Diceyは片木とともに2018年には京都で開かれたIGCS学術総会において、Eriko-Aotani Patient-Caregiver Symposiumを開催しました。このシンポジウムは2016年に亡くなった、日本の婦人科がん臨床試験を支えたCRC(臨床試験コーディネーター)青谷恵利子さんの功績を讃え、婦人科がんと臨床試験の理解を広めるためのもので、国内外から多くの患者さんが参加し、医療者とともに婦人科がんや臨床試験について学びました。
- Diceyと片木はさまざまな活動を通じて何度も対話を重ねてきました。Diceyは片木にとって「師匠」「親しい友」「母」のような存在でした。
Dicey が患者支援活動において大切にした 3 つのキーワード
- Engagement(繋ぐ)
- Empowerment(力付ける)
- Survivorship(共に乗り越える)
Diceyに私たちが教わったことは数えきれないほどあり、すべてが私たちの活動に活かされています。
生前、日本で講演を求められたDiceyは「人種や言語の壁を越え(彼女が)医療者や患者さん、ご家族から揺るぎない信頼を得るまでに16年もの月日を費やした」と語りました。「Small Steps(小さな階段)を上るように進んでいけばいつかゴール(目標)に辿り着くこと」を教えてくれました。
Diceyに追いつくことは難しいのかもしれない、だけど私たちスマイリーは、彼女の教えを胸に患者さん一人ひとりの声に寄り添い、支え合いを広げてまいります。
スマイリーの歴史
スマイリーの歩み(年表)
| 2006年 | 9月1日 卵巣がん体験者の会「スマイリー」設立 9月15日 設立のきっかけとなった患者さんが44歳で逝去 9月25日~12月31日 再発卵巣がんの治療薬を求める署名活動を実施 |
|---|---|
| 2007年 | 4月26日 厚生労働省に28,603筆の署名を提出 10月 日本テレビ「ニュースリアルタイム」でスマイリーの活動が報道される 10月 報道を見た舛添要一厚生労働大臣が「新薬承認の審査官を3倍に増やす」と約束 11月 厚生労働省よりドキシル(再発卵巣がん治療薬)を通常診査(当時4年かかるといわれていた)から優先審査に変更したと連絡をうける |
| 2008年 | 10月15日~12月31日 再発卵巣がんの治療薬を求める署名活動を再度実施 |
| 2009年 | 1月27日 厚生労働省に154,552筆の署名を提出、署名には婦人科医・腫瘍内科医ら19名、患者団体3団体が連名を申し出る 4月22日 ドキシルが承認される 7月 厚生労働省がこれまで設置していた「未承認薬検討会議」に加え患者団体から強く要望があった「適応外薬の検討会」の設置をすると表明。広く学会・患者会からの医薬品開発要望を募集 |
| 2010年 | 2月 厚生労働省「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」発足 8月 厚生労働省「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」においてスマイリーが要望をしていたゲムシタビン、ノギテカン(トポテカン)の公知申請が認められる。しかし承認までの半年を待てないとして保険適用の前倒しを厚生労働省「中央社会保険医療協議会」に要望し認められる(事務局:グループネクサスジャパンとスマイリー、70団体が連名) 秋 卵巣がん東京フォーラム開催する。翌年以降、製薬企業スポンサーを外し患者本位の運営に変更。 12月 スマイリー代表の片木美穂が日経Woman of the Year 注目の人に選出。患者会として収入ゼロのため別枠での受賞 |
| 2011~2012年 治療薬の承認ラッシュ |
2011年2月 ゲムシタビン、ノギテカン承認(スマイリーの要望) 2012年1月 エトポシド承認(スマイリーの要望) 2012年2月 パクリタキセル(毎週投与)承認(スマイリーの要望) |
| 2013~2018年 国際連携の強化 |
2013年5月 第1回 World Ovarian Cancer Day に日本で唯一公式参加 2013年9月 婦人科がん臨床試験啓発イベントGlobe-athon Japan日本初開催 2013年10月 ベバシズマブ承認(スマイリーの要望) 2016年3月 World Cancer Coalition(世界卵巣がん連合)設立に日本から唯一公式参加 2018年9月13日 IGCS(国際婦人科がん協会)の京都大会においてEriko-Aotani Patient-Caregiver Symposiumを開催 |
| 2019年以降 新たなスタート |
2019年3月 当初の「ドラッグ・ラグ解消」目標を達成し一度活動終了するも、多くの患者から活動を続けてもらいたいという要望を受け、会員制を廃止して活動を再開 2019年9月 IGCS(国際婦人科がん協会)ブラジル・リオデジャネイロ大会において代表片木美穂が Distinguished Advocacy Award 受賞 2020年 新型コロナウィルス蔓延により対面の相談支援活動をやめzoomを導入 2022年6月 対面おしゃべり会テスト開催 2023年 対面おしゃべり会を再開 |
| 最新の活動 (2024年-2025年) |
2024年3月10日 「Music Together~音楽とともに語ろう がんのこと~」開催 2024年9月 World GO Day(婦人科がんの日)とEuropean Network of Gynaecological Cancer Advocacy Groups 準会員に加盟 2025年7月 厚生労働省「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において再発した低異型漿液性卵巣がんに対しトラメチニブが公知申請となる。 |
この年表は、署名運動や治療薬承認の取り組みから国際連携、そして現在の多彩な活動まで、スマイリーの歩みを一目でご理解いただけるようまとめたものです。今後も卵巣がん患者さんとご家族に寄り添い続けてまいります。
学歴
1992年3月 金蘭会高校卒業
1994年3月 金蘭短期大学国文科卒業
職歴
1994年4月 トランス・コスモス株式会社入社
1999年7月 トランス・コスモス株式会社退社
2006年9月 卵巣がん体験者の会スマイリー設立 代表(現任)
2015年4月 一般社団法人東北臨床研究審査機構理事
2019年6月 一般社団法人東北臨床研究審査機構理事(退任)
現在 国立大学法人浜松医科大学非常勤講師
所属学会
一般社団法人日本医療安全学会(JPSCS)
委員歴
- 2009年 特別非営利活動法人婦人科悪性腫瘍研究機構倫理委員、COI委員(2014年まで)
- 2009年 一般社団法人婦人科がん臨床試験コンソーシアム倫理委員(2025年まで)
- 2011年 厚生労働省 厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会委員
- 2011年 第49回日本癌治療学会学術集会 ペイシェント・アドボカシー・プログラム委員(2012年まで)
- 2012年 国立がん研究センターがん対策情報センター外部委員意見交換会委員(2013年まで)
- 2013年 北里大学グローバル臨床研究センターアドバイザリーボード(2017年まで)
- 2013年 CRCと臨床試験のあり方を考える会議2013in舞浜 プログラム委員
- 2014年 厚生労働省 偽造医薬品・指定薬物対策推進会議構成員
- 2017年 CRCと臨床試験のあり方を考える会議2017in名古屋 プログラム委員
- 2021年 一般社団法人日本医療安全学会 インフォームドコンセント検討部会委員(現職)
- 2023年 一般社団法人日本医療安全学会 民間療法のあり方に関する検討部会委員(現職)
- 2023年 CRCと臨床試験のあり方を考える会議in岡山 プログラム委員
- 2024年 慶應義塾大学病院治験審査委員(2025年9月まで)
- 2024年 一般社団法人日本病院薬剤師会臨床研究倫理審査委員会特別委員(現職)
- 2025年 一般社団法人医療安全全国共同行動 いのちをまもるパートナーズ 行動計画8「有事・医療事故発生時における安全確保」委員(現職)
- 2025年 一般社団法人婦人科がん臨床試験コンソーシアム臨床試験適正推進委員(現職)
- 2025年Lancet Ovarian Cancer Commission-Patient Adovocates Meeting Member
受賞歴
2010年:日経Woman of the year「注目の人」
2019年:2019 IGCS Distinguished Advocacy Award
IGCS授賞式の動画です
出版
- ナースのための臨床試験入門 新美三由紀、青谷恵利子、小原泉、齋藤裕子、医学書員、2010年2月 巻頭「患者が臨床試験と看護師に望むこと」執筆
- オンコロジストはこう治療している「婦人科がん診療と化学療法(全面改訂第二版)」坂田優/監修、杉山徹/編集、ヴァンメディカル、2012年10月 「患者が求める治療決定へのアプローチ(P172-175)」 「患者会の支援とは?(P181)」執筆
- 婦人科がん薬物療法パーフェクトガイド 渡部洋/編集、診断と治療社、2021年9月 「婦人科がん患者会の取り組み(P227-228)」執筆