卵巣がん体験者の会スマイリーバナー

ovarian cancer patients support group,SMILEY

スマイリーからのお知らせ


人生会議の経過のご報告

2019年11月30日

 

卵巣がん体験者の会スマイリーは11月25日に厚生労働省に対して「人生会議」のPRポスターの改善の要望を提出しました。

【提出した経緯】
厚生労働省はACP(アドバンスケアプランニング)について普及していく会議を積み重ねており注目していました。
海外ではAD(アドバンスディレクティブ)を導入したもののやはりより良いエンドオブライフケアにつながらなかったという歴史があり、取り入れられたのがACPです。
その過程は木澤先生のこのスライドがとても詳しく説明されています
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000173561.pdf
日本ではACPの重要性は誰もが認めるところだとは思いますがACPというとなかなか伝わらないのではないか?という意見が厚生労働省の会議のなかであり、ついた愛称が「人生会議」でした。
ACPのなかには「健康成人に対するACP」「病気を持った患者に対するACP」があり、病気を持った患者に対するACPのなかにがん患者や難病のかたなどが含まれます
もちろんそのなかにはADで確認されるような要素も含まれます

がん患者さんを支援していてもより良いエンドオブライフケアのために医療者や家族、そして患者さんご自身が入って話し合うことの大切さを感じています。
だからこそ、少し人生会議という愛称自体には違和感があったものの、ACPという「答えが出なくておお互いの思いを話し合おう」「それは時間の経過で考えが変わることもあるから確認しあおう」ということの大切さは、がん患者にとっても同じであるし、ACPには病と向き合う人も対象として含まれていました。むしろがん緩和ケア領域で進んでいたためがん患者にとって必要なプロセスでした。
 
しかし今回のポスターに関しては、ADの要素がとても強いこと、なによりも話あうプロセスの大切さを伝えるのにこの人生の最後の時間のイメージを使うことが果たして良いのか。

また、このポスターは自治体に広く配布され、都立病院や市立病院など病院でも貼り出される可能性があることも知りました。
私が日頃向き合う患者さんは「ハッピー」な患者さんということはとても少なく、いま治療に難渋していたり、寛解はしたものの自分のこれからがとても不安で苦しい方がとても多い・・・むしろほとんどがそういう方です。
そしてその辛い訴えのなかには「家族にどう伝えればいいのか」「自分はこう願っているけど家族の負担になるのではないか」まさに話し合うプロセスが必要な段階の患者さんもいるのです。
そんな必要な患者さんが、今回も抗がん剤が効いてなかった・・・と診察室を出て、このポスターが貼ってあるのを見た時、どう思うだろう。
ご家族を亡くした方が、もっと話し合えばよかったといま自分を責めている時に、このポスターを見た時どう思うだろう。
そう思うと、せっかくACPというものが良いものなのに、うまく伝わらないのではないかと思いました。
もちろん傷つけるとも。
 
そこで要望書を提出させていただいたわけですが、私の視野の狭さと人間としての未熟さでお恥ずかしいことに、とてもきつい詰問口調のお願いになってしまいました。
「話し合うことの大切さを否定するのか」「せっかくのいい取り組みを止めるのか」「圧力団体の狭い視野で国活動を止めるな」多くのご意見をいただきました。
その未熟さ、至らなさはお叱りやご意見をいただいて然るべきだと思っています。
ただ私に賛同を示してくださった患者会、患者さん、取り上げてくださった記者さんにまで攻撃が向いてしまったことは大変申し訳なくたいへんなご迷惑をおかけしました。
また私の家族にまで怒りの目が向いてしまったこと本当に申し訳なく悲しく思います。
もっと丁寧に要望のなかで説明をすればよかったと深く反省をして謝罪します。
 
私が日頃向き合う人のなかには少なくとも「このポスターを見るのが辛い」方たちがいることをもっと丁寧に伝えて、よりよい啓発をしたいんだともっと丁寧に伝えるべきだったと思います。

【経過】
11月29日11時半ごろ、厚生労働省の担当者の方とお話をしました。
すぐに、とても失礼な文章であり申し訳なかったと謝罪させていただいたところ「こちらもACPにはがん患者さんなど病に向き合って今苦しい時間をお過ごしであるかたがいるという視点を忘れていました。」と厚生労働省の方もお話くださいました。
そこで改めてACPの大切さを双方で確認しあいました。
私からはいただいたご意見のなかには人生会議がACPではなくADであると理解されている方がとても多いこと、ACPは答えがでなくとも身近な家族がどういう考えをもっているのか話を聞き理解をし、その人がその人らしく最後まで生きられるよう支え意思決定していくプロセスであることを伝えるには、これまで長い時間にわたって、厚生労働省で議論されてきたことがとてもいい話し合いだったと思うので、そこからもう一度うまく啓発して欲しいこと。
なによりも私たちも日頃、患者さんがご家族に、医療者に自分の思いを表明できない経験をしているのでACPというプロセスがあることを伝えたいし、日本でいい啓発資材があれば、話し合うことってお互いにとって大切だよということが広まれば嬉しいので応援したいとお伝えしました。
 
今回、ACPの会議に入っておられた委員の方々が人生会議のポスターについて作られることすら知らなかった、目を通していないなど表明されていました。厚生労働省の方もそこを反省しておられました。

そういった第一人者のみなさまにいま一度ご相談いただき、健康な人も、病と向き合う人にとってもより良いACPの普及についてお願いしたいとお伝えしました。
もちろんそのうえで、私がお力になれることがあれば、いつでもご協力させてくださいと。
 
健康な人と、病といま向き合っている人
病と向き合っていてもこのポスターいいと思える人、見ると辛いと感じてしまう人
いろいろな立場の方がいて、全てを配慮していたら萎縮して結局いい取り組みが届かなくなるのではという懸念はもちろんあるかとおもいます。
でも例えば貼る場所によりデザインを変えるとか、いま、SNS上で多くの方が私ならこういうポスター作るよって出していただいているような、話し合いって大切だよね!とよくわかるイメージのポスターなどいい案もたくさんあると思います。

もちろん私もメディアの取材などではこれまでもイギリスやカナダの患者会からいただいた啓発資材などお示しさせていただいてこういうイメージだと受け入れやすいのではとお伝えしています。
 
【最後に】
日々患者さんと向き合っているとACPの大切さはとても痛感します。
しかしながら、視野の狭さと自身の未熟さでうまくそれを説明しきれず、とても偏った要望になってしまい、結果、人生会議をぶっ潰すようなよくない結果になりそうな状況にしてしまったこと深く反省しております。

でも多くのみなさまがそれぞれの立場でご意見をくださったことで、私もとても学ばせていただいたし、また人生会議について多くの方が考えてくださり、良い方向に進むのではないかと・・・・身勝手かもしれませんがそう思っています。
ACPはがん以外の方達にも大切なように、がん患者にとっても家族にとっても大切なプロセスです。
私が患者さんに、ご家族に相談された時、こういうプロセスって知ってる?とそっとテーブルに出しやすいそんな資材ができくれたら・・・。
しかし今の私にそんなことを言う資格はないと思っています。
 
厚生労働省と人生会議が必要であること、この取り組みを止めることではないこと、むしろ前向きに進めていくことを確認できましたので要望書は要望した事実を報告するのみとして削除させていただこうと思います。
 
スマイリーなんていらない、片木はもう活動するなという声もたくさんいただいております。
今後の身の振り方については改めて考えていきたいと思っています。
  
最後に。
小籔様が昨日のミントという番組で大変お辛い思いをされてしまったことをお話しされていたこと報道で知りました。
本当に深く深くお詫び申し上げます。
タレントさんは与えられた仕事をされただけでありなんの責任もありません。
またそれで、お母さまをなくされた経験がご自身の手の届く範疇以外にも伝わってしまい追体験をされたり辛い思いをされていないかと・・・私にはそんな資格はないと知りながらも、 ただただ申し訳なく思う次第です。
本当に申し訳ございませんでした。

片木美穂

 


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