Niraparib in Late-Line Treatment of Ovarian Cancer
卵巣がんでは2018年、PARP阻害薬のオラパリブ(リムパーザ)が承認されました。
当初はBRCA1/2遺伝子変異を有する患者に対してのみの承認ではないかといわれましたが、同じPARP阻害薬の臨床試験などの結果によりBRCA遺伝子変異を有しなくても効果を発揮する患者がいることがわかり、日本ではBRCA遺伝子変異の有無に関わらずプラチナ感受性(プラチナ系の抗がん剤が奏功した)再発卵巣がんの治療にオラパリブは使えるようになっています。
現在、日本でも複数のPARP阻害薬の治験が進んでおり、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が2019年3月29日に更新した「主たる治験情報」によると
ABT-888(ヴェリパリブ)
MK-4827(ニラパリブ)
AZD2281(オラパリブ)+MEDI4736(デュルバルマブ)
CO-338(ルカパリブ)+BMS-936558-01(ニボルマブ)
などのPARP阻害薬の治験が進んでいます。
*デュルバルマブやニボルマブはPD-1/PD-L1体薬です。PD-1/PD-L1抗体薬は他にもアベルマブの治験も進んでいます。
*2019年3月末時点で治験中ですので現在治療に使うことはできません。
そんなPARP阻害薬の実態も少しずつですがわかってくるようになりました。
ASCO-postに「Niraparib in Late-Line Treatment of Ovarian Cancer」という論文が掲載されています。
https://www.ascopost.com/News/59935
過去に3回以上の治療歴があるプラチナ感受性再発卵巣がん(漿液性卵巣がん・卵管がん、類内膜)患者さんに対してニラパリブを単剤で投与した臨床試験について書かれており、相同組換え修復異常を有する(HRD陽性)の卵巣がん患者にも適応を拡大を支持するという結語になっています。
この試験結果がいま治療を行なっている患者さんにどうこうなるものではありませんが、新しい薬はこうして様々な臨床試験の結果から「どんな人により有効なのか(逆に効果が期待できない場合もわかったり)」「どのタイミングで使うと良いのか」などわかっていき、やがて一番効果が発揮できるところで治療に用いられるものになっていきます。
10年前にはドキシルも、ジェムザールも、ハイカムチンもアバスチンも日本では卵巣がん治療に使えませんでした。
でも、こうして世界中の婦人科医・腫瘍内科医などが研究を積み重ねて多くの治療薬がいま卵巣がん患者に元に届けられようとしています。
だから、いま治療に苦慮していても「最悪を考えながらも絶対希望を捨てないで」もらえたらと、希望に繋がればいいなといつもこういう論文を読むたびに思います。