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スマイリーからのお知らせ


【お知らせ】【12月12日追記あり】再発した低異型度漿液性卵巣がんの治療薬の承認を求めて厚生労働省に検討を要望する書類を提出しました。

2022年12月08日

 

平素よりスマイリーの活動にご理解と応援いただきありがとうございます。
卵巣がん体験者の会スマイリーの片木美穂です。

2022年12月7日木曜日、卵巣がん体験者の会スマイリーは厚生労働省 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」ご担当者様宛に「再発した低異型度漿液性卵巣がんに対するトラメチニブの承認をお願いする要望書を提出させていただきましたことを報告いたします。

●低異型度漿液性卵巣がんとは

低異型度漿液性がん(low-grade serous carcinoma:LGSC)は両側性発生の頻度が高く進行癌も稀ではありません。
卵巣に限局する場合は予後良好であるが、化学療法薬剤感受性は低く、残存腫瘍径が1cmをこえる場合は、1cm以下のものに比して無増悪生存期間よび全生存期間が低下するがんです。
LGSCは高異型度漿液性がん(high-grade serous carcinoma:HGSC)とは別個の生物学的特徴を有しており、HGSCの患者が圧倒的に多いです。
LGSCは漿液性境界悪性腫瘍を前駆病変として発生し、KRAS,BRAF変異を認める頻度が高いが、通常TP53変異は見られません。
(卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年 )


上皮性卵巣がんの約5%がLGSCと報告されています(Cancer 2012; 118: 3087–94.)。
卵巣がんの罹患数は、2018年のデータ(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」)で、13049例であり、上皮性卵巣がんの割合を90%とすると、11744例となります。そのうちの5%がLGSCであると考えると、年間約587例の罹患数と推計される超希少がんです。

卵巣がん体験者の会スマイリーでは2021年度の相談件数1016件中、LGSCの患者さんの相談は2件でした。
今年はまだ暫定数ではございますが、11月末日までの1265件中、LGSCの患者さんの相談は2件でした。
非常に相談数が少ないのではありますが、稀ながんであるため情報が少ないこと、また薬剤感受性がHGSCに比べると低いために再発をすると治療に苦慮する特徴があり「日本のどこでも良いからLGSCの治療経験がある医師に繋いでほしい」といった相談がほとんどです。

●要望をした「トラメチニブ」とは
成分名:トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物錠
一般名:メキニスト錠2mg, 0.5mg
販売社名:ノバルティスファーマ株式会社
用法容量:通常、成人にはトラメチニブとして2mgを1日1回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
日本での承認取得状況:
○BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫
○BRAF遺伝子変異を有する切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
ダブラフェニブとの併用において、通常、成人にはトラメチニブとして2mgを1日1回、空腹時に経口投与する。ただし、術後補助療法の場合には、投与期間は12ヵ月間までとする。なお、患者の状態により適宜減量する。


●要望をした背景
○2022年9月10日にNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)が改訂した卵巣がんのガイドラインに低異型度漿液性がん(LGSG)の治療でトラメチニブが表記されました。
○世界で著名な医学誌であるLANCETにGOG281試験、トラメチニブ vs.医師選択治療の第三相試験が報告され、トラメチニブがPFSで優っていました。
Trametinib versus standard of care in patients with recurrent low-grade serous ovarian cancer (GOG 281/LOGS): an international, randomised, open-label, multicentre, phase 2/3 trial. Lancet 2022; 399: 541–53
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35123694/
○LGSCはHGSCや、他の上皮内卵巣がんとも別個の特性を有しているにもかかわらずこれまで有用とされる治療がなく再発した場合の治癒が極めて困難であったこと、また卵巣がんのなかでも超希少な組織型であるうえに、再発する患者となると年間発症者数は50名ほどと想定されること、日本において治験が行われていないこと、先進医療や患者申出療養というかたちで臨床試験を行うにして2mgを1日1回という容量を考慮すると薬剤費用が高く(2mg 2万9558.4円/錠 : 1ヶ月30日と換算して88万6752円)、患者が医療費を負担する形では臨床試験実施が困難であるのではないかと考えました。


NCCNのガイドラインに掲載されていることや、有効性を示す論文が医学雑誌に掲載されたことを受け「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」でLGSCに対する有用性を検討いただき少しでも患者に届くことを目指せないかと考えました。

●今後についての懸念・確認事項
○米国でもNCCNガイドラインに掲載されていることから患者は保険範囲内でトラメチニブの使用ができるが、FDAはLGSCに対してトラメチニブの承認をしていない。
○NCCNガイドラインではダブラフェニブ(タンフィラーカプセル)との併用治療も記載されているが、そちらについても要望するべきか。
○BRAF遺伝子変異について診断が必要か否か。(補足)BRAF遺伝子変異については固形がんで治験があるため要望は遺伝子変異なしで行います。
R4.3.29 (R4薬)第534号 ダブラフェニブメシル酸塩 BRAF V600 遺伝子変異を有する進行・再発の固形腫瘍(悪性黒色腫、非小細胞肺癌及び結腸・直腸癌を除く)
R4.3.29 (R4薬)第535号 トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物 BRAF V600 遺伝子変異を有する進行・再発の固形腫瘍(悪性黒色腫、非小細胞肺癌及び結腸・直腸癌を除く)
再発した低異型漿液性がんにつきましては主治医とよく相談のうえで治験参加を検討ください。治験については十分な説明を受けた上で参加することが本当に良いのかよく考えて自発的な意思決定を行うようお願いいたします。
 
以上については提出をした厚生労働省にもお話をしており、厚生労働省から関連学会などにも問い合わせをしていただいたうえで、要望の変更の必要があれば迅速に変更を行うとの確認をしております。
私の英語力ではNCCNのガイドラインに記載されている根拠となる論文やガイドラインに記載するにあたってどのようなディスカッションがあったかなど細かいところを正確に読み取ることができず頼りない報告で申し訳ございません。

●要望の今後についての見通し
○厚生労働省による要望の受け取り (完了)
○厚生労働省による要望内容の確認と記載不備事項のチェック、スマイリーでの変更・再提出(完了)
(ただし上記の確認事項は学会などの意見次第で変更になる可能性あり)
○厚生労働省から関連学会に照会
○医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に諮られる
○医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の結果がでる
・医療上の必要性が高く公知の事実がある→中央社会保険医療協議会での確認後にすぐに保険適応で使えるようになり、企業は半年以内を目処に承認を取得する努力をする
・医療上の必要性が高い→企業はできるだけ速やかに治験などに着手するなど含めて何らかの形で考えを示さなければならない
・医療上の必要性が高いとは言えない→これは困る・・・そうなると企業に治験を求めるなど必要になるが患者数も少ないがんであり見通しがかなり厳しくなるのでこれは避けたい。

●補足
以前は、厚生労働省に対して未承認薬・適応外薬の署名を提出するなどして新規薬剤の承認をお願いしてまいりました。
しかしそれは患者会にとっても、治療中の患者にとっても大変な作業でした。
そうした背景もあり2010年2月より厚生労働省は「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を立ち上げました。
それにより、学会および患者会は「医療上必要性が高い」と考えられる薬剤について厚生労働省に要望を提出することで、厚生労働省がその必要性を検討、必要性に応じて公知の事実(国内外のガイドラインに掲載されている・国内外の医師の教科書的なものに掲載されている・その治療の確固たる有用性を示した質の高い論文がある)などがあれば企業に承認申請を行うよう指示・中央社会保険医療協議会の確認を得て承認前でも即時保険適用、公知の事実まではいかなくても患者の背景などをかんがみて開発が必要であれば企業に開発要請ができるようになっております。
そうしたことから、現在、厚生労働大臣に何十万の署名を持って行ったとしても「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に要望出してね」で終わり、署名が無駄になることから今回は署名活動は現状考えておりません。
もちろん今後の状況についてあまりにも理不尽なお沙汰が下るとか、卵巣がん患者の人権はどこに行ったみたいなことになった場合は呼びかけるかもしれませんが、以上のことから署名は現状行う考えではないということをご了承ください(無駄となるのがわかっているのに個人情報を提出するパフォーマンスだけはしたくありません)。

 


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