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ovarian cancer patients support group,SMILEY

臨床試験とは

みなさんが「卵巣がん」の治療を受ける際に診療の場では「目の前の患者さんにとって最善と思われる治療」が提供されます。
では、その「最善と思われる治療」はどのようにして提案されるのでしょう。
メディアで日々報じられるように、新しい治療がどんどん世の中に出てきます。
「でもその治療は本当に卵巣がんに効果があるの?」「初回化学療法で使う方がいいの?」「それとも再発の時に使う方がいいの?」「他の抗がん剤と組み合わせてみたらどうだろう」
なにも情報がなければ「最善の治療」として患者さんに提供することはできません。
そんな診療(診察の場)で医療者の疑問を解消する1つが「科学的根拠(エビデンス)」です。
科学的根拠とはどういうものか。
患者さんを特定の条件(例えば初回化学療法の患者さん とか 再発した患者さんなど)を満たした患者さんに協力をしてもらい、「これまでに有効とされてきた治療」と、「もしかしたらそれと同等(以上)の効果が期待される治療」とに分かれて治療を受けていただきそれぞれの有効性や安全性を比較します。
そしてより有効性と安全性が高かった治療が「科学的根拠(エビデンス)」として積み上げられ、みなさんが治療を受ける際に「最善の治療として提示される」ことになっていきます。
いまがんと向き合う患者さんに協力してもらいながら、これから治療を受ける患者さんのための「科学的根拠」を生み出す試験が「臨床試験」です。
「臨床試験」を行うには、その試験により協力してくださる患者さんに不利益はないか、有害事象にきちんと対応できるか、倫理的な問題はないかなど厳しい審査が行われ診療(いま、目の前にいる患者さんのために最善を尽くす)ではなく研究(目の前の患者さんに協力してもらいながら未来の患者さんのための治療を作る)として実施されます。

 

臨床試験は3つの段階に分けられています。

第Ⅰ相:健康な人で

ごく少ない量の「くすりの候補」から使い始め、だんだん量を増やしていき、副作用について注意深く調べます。抗がん剤の場合はがん患者さんが参加します。

第Ⅱ相:少数の患者さんで

「くすりの候補」が安全か、病気に対して効き目があるか、さらに使い方(使う量・期間・間隔など)を調べます。

第Ⅲ相:多数の患者さんで

最終的に、これまでの結果でわかった「くすりの候補」の効き目や副作用を調べ、標準的な使い方を確認します。

卵巣がん初回化学療法の歴史

私たち卵巣がん患者が受けている初回化学療法も「臨床試験」が行われ、多くの卵巣がん患者さんにとって「より有効」で「より安全」な治療が選ばれてきたものです。

治験と臨床試験の違い

 治験(薬剤開発のための臨床試験)

  • 承認申請のための薬効評価を目指した厳密なデザイン
  • 厳しい患者選択除外基準(安全性と薬効評価)
  • 比較的短期間、小規模、 代替エンドポイント(サロゲートエンドポイント)
  • 研究計画書は依頼者(主に製薬企業)が作成
  • 信頼性とデータの正確さを担保する研究計画と実施体制を優先

臨床試験(医療現場の問題解決)

  • 現場の状況を反映させた、治療方針の比較を可能に する現実的なデザイン
  • 一般化を重視した患者選択除外基準
  • 比較的長期間、大規模、 真のエンドポイント(トゥルーエンドポイント)
  • 研究計画書は研究者が作成
  • 信頼性と結果の一般化可能性を重視、正確さの追求には限界

臨床試験と、診療はどちらがいい?

治療に苦慮していたりすると「いまのまま治療を受けていていいのかなぁ、なにか効果がありそうな臨床試験はないかぁ」といったことを考える患者さんは少なくないと思います。
実際に患者会にもそのような思いから「なにかいい臨床試験はありませんか?」という問い合わせは後を絶ちません。
臨床試験が実施されるまでには試験に協力してくださる患者さんにとって「不利益がないか」「倫理的に問題がないか」といったことが検討されて実施されます。
そして治療法の「有効性」や「安全性」を調べていくのです。
つまり「この治療法は明らかにいいだろう」とはじめからわかっていたら「臨床試験」を行う意味がありません。
「これまで実施されていた治療」と「もしかしたら効果があるかもしれない治療」とどちらがいいかわからないから詳しく調べています。
「これまで実施されていた治療」は多くの患者さんが治療として使っていたために「効果」も「有害事象」もおおよそわかり対策も練られています。
一方で新しい治療は「もしかしたら既存の治療よりも効果がある」かもしれませんが「治験などではよくわからなかった副作用」なども起きるかもしれませんし、「もしかしたら既存の治療よりも効果がない」可能性もあるのです。
そのため、臨床試験を検討される患者さんはどうか主治医と「本来(あなたに対して)実施される予定だった治療はどのようなものか」を確認し、「臨床試験の同意説明書に書かれている予想される効果や予想されるデメリット」についてきちんと説明をうけたうえで、内容を理解し、自発的に参加するかしないかを選んでください。

臨床試験の探し方

国立がん研究センターがん情報サービス「LinkIconがんの臨床試験を探す
 
国立保健医療科学院「LinkIcon臨床研究〔試験〕情報検索ポータルサイト
 

気になる臨床試験をみつけたら

まずは印刷をして主治医に「的確基準(臨床試験に参加するための条件)」があなたに合っているか「除外基準(患者さんの安全等を守るために臨床試験に参加できない患者さんの条件)」からあなたが外れているか確認をしてもらいましょう。
そして、その臨床試験の目的なども確認してもらった上で、参加を検討してみてもよいのではないかということになったら主治医から問い合わせ窓口に打診をしてもらってください。
またその際に、検索した情報でわからないことや不安なことがあれば確認してもらいましょう。
患者さんやご家族が窓口に問い合わせても細かい確認が取れないために詳細を教えてもらえなかったり、参加を断られることもありますのでご注意ください。