卵巣がんのリスクを減らすために
完全に予防する方法はありませんが、リスクを下げるためにできることがあります。ここでは、現在わかっている科学的な知見をもとに、患者さんにもわかりやすくまとめました。
卵巣がんは予防できるの?
残念ながら、卵巣がんを完全に防ぐ方法はありません。ただし、いくつかの生活習慣や医療的な選択によって、リスクを下げることは可能です。
避けられない要因(年齢、遺伝など)もありますが、「知っておくこと」「相談すること」で早期発見やリスク低減につながります。
卵巣がんのリスクを下げる方法
低用量ピル(経口避妊薬)の使用
- 5年以上の使用で、卵巣がんのリスクが下がることがわかっています。
- 効果は服用をやめた後も長く続くとされています。
- ただし、他の病気のリスクがわずかに上がる可能性があるため、使用するかどうかは医師と相談して決めることが大切です。
※日本ではピルの使用率が欧米より低く、情報が十分に届いていないことがあります。不安がある場合は婦人科で相談できます。
妊娠・出産
- 妊娠中は排卵が止まるため、卵巣がんのリスクが下がると考えられています。
- 出産回数が多いほどリスクが下がる傾向があります。ただし、妊娠・出産は個人の事情が大きく関わるため、「産まないとリスクが上がる」というプレッシャーを感じる必要はありません。
授乳
- 授乳期間が長いほど、卵巣がんのリスクが下がるという研究があります。これも排卵が抑えられることが理由と考えられています。
卵巣がんのリスクを下げる手術(予防的手術)
卵管・卵巣の予防的切除(リスク低減手術)
- 卵巣と卵管を両側とも取り除く手術は、卵巣がんのリスクを約95%減らすとされています。
- 日本では乳がんを診断された女性で遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と診断された卵巣がん罹患リスクが高い方に推奨されます。
- ただし卵管・卵巣の予防的切除を行なったとしても、腹膜癌のリスクが残るため定期的なスクリーニング(検診)が必要です。
卵管結紮(避妊手術)
• 卵管を結ぶ手術を受けた女性は、卵巣がんのリスクが25〜65%低下したという研究があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8133619/(JAMA1993年 前向きコホート研究)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11377596/(LANCET2001年 BRCA1/2遺伝子変異を持つ女性に対して)
ただし、後続の研究では「卵管結紮だけでは不十分で、卵管そのものの切除がより有効」との議論もあり、日本でHBOCと診断された女性に対しての現在の標準は 卵巣・卵管切除に移行しています。
生活習慣でできるリスク低減
喫煙しない
- 喫煙は多くのがんの原因になります。
- 卵巣がんの中でも「粘液性腫瘍(mucinous)」のリスクが上がることが知られています。
健康的な体重を保つ
- 肥満は多くのがんのリスクを高めます。
- 食事と運動の両方が大切です。
食事のポイント
- 野菜・果物を多くとる
- 甘い飲み物を控える
- アルコールはほどほどに
運動のポイント
- 無理のない範囲で、継続できる運動を
- ウォーキングやストレッチでも十分効果があります
卵巣がんのリスクが高くなる可能性がある状態
子宮内膜症
- 卵巣がんのリスクが少し高くなることが知られています。
- ただし、子宮内膜症の多くの方は卵巣がんになりません。
- 卵巣がんと診断されてから「実は生理痛が酷かった」などご自身が子宮内膜症だったのかもしれないと気づかれ、婦人科受診をしなかったことを悔やまれる患者さんもおられます。生理の際に鎮痛剤などを服用されている患者さんは婦人科受診を検討し、もしそれで子宮内膜症と診断された場合は定期的な通院をしてほしいと願います。
糖尿病
- 特にインスリン治療をしている方でリスクが上がる可能性があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41366800/
上記の論文では43研究を統合した大規模メタ解析の結果として、糖尿病の女性は卵巣がんリスクが 1.14倍 に上昇( 1型糖尿病:リスク 1.46倍、2型糖尿病:リスク 1.12倍)していることが示されています。
ホルモン補充療法(HRT)
- 更年期症状の治療として使われますが、卵巣がんのリスクをわずかに上げる可能性があります。ただし、HRTには骨粗しょう症や心血管疾患の予防など多くのメリットもあり、多くの女性ではメリットがリスクを上回ります。
- 閉経前の女性で、卵巣がんの治療により外科的強制閉経となった女性に対するHRTについては、生存期間を延ばしたという報告もあることから「卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025」CQ24において、外科的閉経となった場合にはHRTが推奨されています。不安な場合は主治医にお尋ねください。
過去の乳がん
- 若い時の乳がんや ER陰性乳がんの既往がある場合、卵巣がんのリスクが高くなることがあります。
血縁者に卵巣がん既往歴がある場合
- 母親や姉妹に卵巣がんの方がいる場合、リスクが約3倍になると言われています。
- 家族歴がある場合は、婦人科や遺伝カウンセリングで相談できます。
日本でも、2026年6月以降、家族歴によっては保険適用で遺伝子検査が受けられる場合があります。詳しくは婦人科医師にお問い合わせください。
最後に
卵巣がんは「予防が難しいがん」と言われますが、知ること・相談すること・生活を整えることで、できる対策は確実にあります。