治験について

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Last updated 2026-04-13 更新者:片木美穂

治験について知っておきたいこと

卵巣がんの治療を続ける中で、「治験」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2008年ごろにスマイリーの患者さん対象に行ったアンケートでは2割の患者さんが治験に対して「新しい治療にアクセスできる」「卵巣がんが治るかもしれない」という前向きなイメージをもついっぽうで、8割の患者さんが「人体実験」「よくわからない」「自分は受けたくない」など後ろ向きなイメージを持っていることがわかりました。
みなさんのなかにも「なんとなく怖い」「よくわからない」と感じている方もおられるのではないでしょうか。


なぜ治験が必要なのでしょうか

「治験」とは医薬品や医療機器を国(厚生労働省)に承認してもらうために行う臨床試験です。抗がん剤の場合はがん患者さんご本人に協力していただくことで臨床試験を行います。
今、私たちが受けている治療の多くは、過去の患者さんが治験に参加してくださったおかげで承認されたものです。
つまり治験は「未来の治療をつくるための大切なステップ」です。
卵巣がんは、まだまだ治療の選択肢が限られている病気です。
再発や治療の選択に悩む場面も少なくありません。
だからこそ、新しい薬や治療法を開発することがとても重要です。


治験は「診療」ではなく「研究」である

私たちは日頃、診察室で主治医と話し合いながら現在承認されている治療方法のなかから最善の治療を選択して治療を受けています。これを「診療」といいます。「診療」は、患者さんの希望などを聞きながらある程度柔軟にスケジュールを組んだり、治療を進めていくことができます。
治験は「未来の治療を作るためのもの」であることから「研究」と位置付けられています。一定の条件のもと行うことにより「有効性」や「安全性」といった正確な評価ができるため、参加にあたっては厳しい条件が定められていたり、薬剤量や投与スケジュールを簡単に調整することが難しい場合があります。
また「標準治療」vs「新薬」といった試験もあり、気に入らない群に入ったからといって「じゃあ治験に協力しません」というわがままは通用しません。そうした比較試験であること、自分ではどちらの治療群になるのか選べないことも含めて納得しなければ治験の参加が認められないのです。

それでも治験に参加する意味はある

治験は未来の治療を作るためのもの、ではありますがいま卵巣がんと向き合う患者さんにとって「これまでの治療では効果が難しい場合に、治験が新しい治療選択肢につながる可能性がある」と考えるのは人として当然のことです。もちろん、治験薬がすべての方に効果があるわけではありませんし、参加はあくまで「選択肢の一つ」です。
無理に受けるものではなく、納得して選ぶことが何より大切です。


治験にはどんな段階があるの?

治験にはいくつかの段階があります。少し難しく感じるかもしれませんが、シンプルにお伝えしますね。

第1相試験(フェーズ1)

主に安全性を確認する段階です。どのような投与スケジュールで、どのくらいの量なら安全に使えるかなどを慎重に調べます。そのため第1相試験が行える病院はかなり限定されています。

第2相試験(フェーズ2)

治療の効果があるかどうかを見ていく段階です。卵巣がんの患者さんに実際に使って、効き目や副作用を確認します。主には短期的な腫瘍縮小効果を見ることが多いです。

第3相試験(フェーズ3)

現在の標準治療と比べてどうかを調べる段階です。ここで良い結果が出ると、薬として承認される可能性が高くなります。腫瘍縮小効果だけではなく、無増悪生存期間や長期的な生存率(ただし追跡期間が長くなると承認までの時間が伸びるので2年生存率や3年生存率)も調べることがあります。


治験はどこで探せばいいの?

治験は、いくつかの方法で探すことができます。もし気になる治験が見つかった場合は主治医に情報を見せて主治医から治験実施施設の担当者に問い合わせてもらいましょう。

主治医に相談する

まず一番大切なのは、主治医に相談することです。あなたの病状やこれまでの治療をよく理解しているのは主治医です。「治験という選択肢はありますか?」と、ぜひ一度聞いてみてください。

インターネットで探す

国立がん研究センター「がん情報サービス」
患者本位の「がん治験情報サイト」
ただし、専門用語が多く情報が探しにくいかもしれません。

がん相談支援センター

多くのがん診療連携拠点病院に設置されています。無料で相談でき、治験についての情報も教えてもらえます。(ただし簡単に探せる範囲なので、本当にそれがあなたにとって適切な治験かまでの判断はしてもらえません)


主治医と話すときのポイント

治験について相談するときは、少し勇気がいるかもしれません。でも、遠慮する必要はまったくありません。
ただ、いま行っている治療が順調に進んでいる場合や経過観察中は「いま、その話をするときではない」といわれますのでご注意ください。

こんなふうに聞いてみてください。

  • 私に合う治験はありますか?
  • 今の治療と比べて、どんなメリット・デメリットがありますか?
  • 参加した場合、通院や検査はどのくらい増えますか?
  • 副作用はどの程度わかっていますか?
  • 途中でやめることはできますか?

治験は「参加すること」よりも、「納得して選ぶこと」がとても大切です。わからないことは、何度でも聞いて大丈夫です。


【よくある質問】プラセボ群にあたりたくないので治験に参加したくない
結論からお伝えすると、「新薬群」「プラセボ群」どちらに割り付けられても、患者さんが不利益を受けないように治験は設計されています。プラセボ群に入る=損をする、というわけではありません。
治験とは、新しい薬を承認してもらうために行う臨床試験です。特に承認に近い段階では、「いまの標準治療と比べて効果や安全性はどうか」をきちんと調べることが求められます。

また、治験は必ず治験審査委員会(倫理審査委員会)で厳しく審査されます。患者さんの人権が守られているか、倫理的に問題がないかが確認され、「参加することで明らかに不利益(たとえば病状の悪化)が生じる」とわかっている治験は実施が認められません。

そのため、卵巣がんの治験でプラセボが使われる場合も、多くは次のような比較になります。

・標準治療(例:パクリタキセル毎週投与±ベバシズマブ)
・治験薬(例:パクリタキセル毎週投与+新薬±ベバシズマブ)

このままでは、どちらの治療を受けているか患者さん自身が気づいてしまいます。希望していない群だと感じた場合、その気持ちが体調や結果に影響してしまう可能性があります。

そこで、次のような工夫がされます。

・標準治療群(パクリタキセル毎週投与+プラセボ±ベバシズマブ)
・治験薬群(パクリタキセル毎週投与+新薬±ベバシズマブ)

このようにすることで、患者さんにも担当医師にも、どちらの群にいるか分からないようにします。これを「二重盲検(にじゅうもうけん)」といいます。
二重盲検とは、医師も知らないことで無意識の影響を防ぎ、患者さんも知らないことで気持ちの影響を減らし、より正確に薬の効果を調べるための方法です。

治験は「どちらの群に入っても標準治療はきちんと受けられる」ことが前提です。プラセボが使われる場合も、治療が何も行われないわけではなく、あくまで標準治療に上乗せする形で使われることがほとんどです。

不安がある場合は、遠慮せず主治医や治験担当の医師に「プラセボは使われますか」「どんな治療内容ですか」と確認してみてください。納得したうえで参加することが何より大切です。

 

【よくある質問】治験で「標準治療群」に入ってしまい損をした。辛い。
治験に参加する際に、「新しい薬ではなく、標準治療やプラセボのグループになったら損なのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。
結論からお伝えすると、どのグループに入っても患者さんが不利益を受けないように、治験は厳密に設計されています。

標準治療群は「これまで通りの適切な治療」です。標準治療群に入った場合でも、それは本来その時点で受けるべきとされている治療です(つまり治験に参加しない場合に選ばれたであろう治療)。そのため、「新しい治療が受けられない=損をしている」ということではありません。

プラセボが使われる場合も同様です。プラセボ(見た目は薬でも有効成分が入っていないもの)が使われる試験でも、多くの場合は
・標準治療 + プラセボ
・標準治療 + 新しい薬
という形で行われます。
つまり、プラセボ群であっても必要な治療が行われないことはありません。

上の質問では二重盲検試験の大切さを伝えましたが、薬物の組み合わせによっては二重盲検が難しい治験もあります
例えば、
・投与の間隔が大きく異なる
・点滴の頻度やスケジュールが明らかに違う
といった場合です。
このようなときは、最初から「どちらの治療を受けるか分かった状態」で行う治験(非盲検試験)として実施されます。

この場合でも、標準治療群は従来通りの適切な治療を受けることになるため、不利益はありません。

最近は「標準治療群に参加した患者さんでも、希望をされた場合は後から治験薬に切り替えられる」試験も増えています。

治験について不安に思うことは、とても自然なことです。
・自分はどの治療を治験の参加で受ける可能性があるのか
・どのような場合に治験で受けている治療が変更されるのか
などについては、主治医や治験担当者に遠慮なく確認してください。

治験は、将来の治療をより良くするために行われると同時に、参加される患者さんの安全と権利が最優先で守られるように設計されています。
「どの群に入るか」に過度に不安を感じる必要はありません。
安心して、ご自身にとって納得のいく選択をしていただければと思います。


最後に

治験は、少しハードルが高く感じるかもしれません。でも治験は、「特別な人だけのもの」ではありません。いまあなたが受けられている治療は過去にあなたと同じ卵巣がんを患った患者さんが治験に参加して承認されたお薬です。
あなたのこれからの治療の選択肢のひとつとして「治験」という選択肢があるということを知っておいていただけたらと思います。
そして、もし迷ったときは、ひとりで抱え込まずに、主治医や周りの人、そして私たち患者会にも頼ってくださいね。あなたが納得できる選択ができることを、心から願っています。