卵巣がんの組織型

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Last updated 2026-04-13 更新者:片木美穂

卵巣がんの組織型(タイプ・種類)

卵巣がんの組織型を知ることは、あなたがこれから卵巣がんの治療を行ううえでとても重要です。卵巣がんのなかでもどんな組織型(タイプ)なのかを知ること、どんなステージ(広がり・進行度)なのかを知ることで治療選択(病気との向き合い方)が変わってくることがあります。
卵巣がんには悪性だけでも30以上の組織型があるといわれ、近年、医療の発展とともに組織型の特徴に合わせた治療も出てきています。卵巣がんはまず卵巣のどこで発生したかで大きく治療が分かれます。

  • 上皮性腫瘍
  • 胚細胞腫瘍
  • 性索間質性腫瘍

それぞれに複数の サブタイプ(亜型)があり、年齢層や治療の特徴も異なります。


上皮性卵巣がん

卵巣がんの 約90% を占める最も一般的なタイプです。卵巣や卵管の表面を覆う細胞(上皮)から発生します。良性・境界悪性・悪性のいずれもあります。

 

高異型度漿液性がん(High-grade serous carcinoma)

  • 卵巣漿液性がんの圧倒的多数がこのタイプです(約95%)。
  • 原発巣は、卵管上皮と考えられており、卵管癌と診断される患者さんの多くがこの組織型です。
  • かつては卵管癌は卵巣がんのうちの1%程度と考えられてきましたが、日本産婦人科学会・日本病理学会編「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱規約 病理編」第2版(2022年)で診断基準が見直され、現在では高異型度症液性の卵巣がんと診断された患者のうち半数程度は卵管原発であると考えられるようになりました。
  • 卵管はお腹のなかで剥き出しになっていることから、お腹の中にがんが広がってから見つかることが多く、早期(ステージ1・2)で見つかるのは約13%とされています
    High-Grade Serous Ovarian Cancer: Basic Sciences, Clinical and Therapeutic Standpoints
  • ただし、抗がん剤が効きやすいタイプといわれており、治療に反応しやすい傾向があります
卵巣がん卵管癌見分けるポイント図
 

低異型度漿液性がん(Low-grade serous carcinoma)

  • 比較的まれなタイプで、卵巣漿液性がんのうち約5%がこのタイプです
  • 卵巣が原発で、 「境界型悪性腫瘍(きょうかいがたあくせいしゅよう)」と呼ばれる、がんになる前の状態が発生母地といわれています
  • 早い段階で見つかり、手術で取りきれる場合は、予後(治療後の経過)が良いとされています
  • 高異型度漿液性がんに比べると抗がん剤が効きにくいため、再発時にはホルモン療法が選ばれることもあります
  • 一部の患者さんにはBRAFという遺伝子の変化が見られ、再発時にはその遺伝子に合わせた治療が行われることもあります
 

類内膜がん(Endometrioid carcinoma)

卵巣(ときに卵管や腹膜)にできるがんの一種で、もとになるのは子宮内膜症(チョコレート嚢腫)や類内膜線維腫といわれる組織です。これらを背景にして起こることが多いため、比較的早い段階で見つかることが多いとされています。

グレード(悪性度)の決め方

充実性成分が占める割合で、次のようにグレードを分けます。
Grade 1(高分化):充実性増殖部分が5%以下、がん細胞は正常細胞とよく似ており、増殖速度が遅い。
Grade 2(中分化):充実性増殖部分が6~50%、がん細胞はグレード1よりも異常な形態を示し、増殖速度も速い。
Grade 3(低分化):充実性増殖部分が50%を超える、がん細胞が非常に異常な形態を示し、急速に増殖します。これは最も悪性度の高いグレードです。
※Grade 1・2でも細胞の異常が強い場合は、一つ上のグレードになります

類内膜がんに見られる遺伝子の変化

以下のような遺伝子の異常が報告されています。ほとんどは遺伝性ではありませんが、ごくまれにMSI(マイクロサテライト不安定性)が高値となり、リンチ症候群と関係する場合もあります。

  • ARID1A
  • PIK3CA
  • CTNNB1(β-カテニン)
  • まれにMSI高値(リンチ症候群)

子宮内膜症との関係

子宮内膜症を伴うことが少なくありませんが、類内膜がんに必ずしも子宮内膜症が伴っていることが診断基準ではありません。

卵巣と子宮のがんが同時にある場合

類内膜がんは他の組織型に比べて子宮体癌と併発していることが多いです。卵巣と子宮の両方に類内膜がんがあると、最初にがんができた場所(原発巣)を特定しにくいことがあります。スマイリーへの相談でも最初に子宮体癌と診断をされ治療を受けた結果、奏功せず、病理セカンドオピニオンを依頼したら卵巣がんだったという患者さんが数名程度ですがおられます。

お薬(抗がん剤)の効果

抗がん剤の効果は、高異型度漿液性がんと同じくらいよいとされています

 

明細胞がん(Clear cell carcinoma)

明細胞がんの多さ

明細胞がんは欧米の人では5〜10%なのに対し、日本を含む東アジアの人では約20〜25%と多く見られます。明細胞がんは日本では高異型度漿液性がんに続き2番目に多い組織型です。欧米中心の臨床試験では明細胞がん患者さんのデータが少ない場合があり、薬の効果に対するデータが不足しがちです。

明細胞がんの早期発見

明細胞がんは比較的早期に診断されることが多く、1期が明細胞がん全体の45.0〜78.8%を占めます。早く見つかれば治療の選択肢が広がり、予後も改善しやすいと言われています。

明細胞がんの発生母地である子宮内膜症(チョコレートのう胞)ががん化するしくみ

子宮内膜症により長年の炎症が原因で、細胞の中のDNAに傷がつき、稀にではありますががん化することがあります。癒着(組織同士がくっつくこと)が強くなると、直腸や尿管などの周りの臓器まで影響が及ぶ場合があります。
近年TFPI2という子宮内膜症と卵巣明細胞がんを鑑別する腫瘍マーカーが開発されています。子宮内膜症が癌化する可能性は1%程度で、稀であるとはいわれていますが、子宮内膜症を有さない女性に比べて卵巣がんになるりすくは4.2倍といわれています。不安な方は婦人科医とよくご相談のうえ、必要に応じて検査を受けてください。

抗がん剤の効きやすさについて

高異型度漿液性がんに比べると、明細胞がんは抗がん剤への反応がやや弱い傾向があります。書籍やインターネットでは「明細胞がんには抗がん剤が効かない」と断言をしているものもあり、不安な患者さんが多く見られる傾向ですが効果には個人差がありますので、治療の必要性について主治医としっかり相談しましょう。

血栓に注意

約20〜30%の患者さんに静脈血栓症(足の静脈などに血の塊ができる)を合併するリスクがあります。足の痛みやむくみ、突然の息苦しさなどがあれば、すぐに医療機関に連絡を。スマイリーの相談を利用していた患者さんのなかでも、卵巣がんの抗がん剤治療は奏功をしていたにもかかわらず、血栓による肺塞栓症や脳梗塞を起こして亡くなられる例も複数経験をしています。血液検査項目にDダイマーを追加してもらうことを主治医と検討ください。

新しい治療ターゲット研究

明細胞がん細胞の遺伝子解析で、ARID1AやPIK3CAの変異、BRAFの欠損などが見つかることがあります。これらを狙った新しい薬の研究が進んでいます。

遺伝の可能性

明細胞がんが血縁者間で遺伝するケースはほとんどありません。

 

粘液性がん(Mucinous carcinoma)

粘液性がんは段階を踏んで進むと考えられています

粘液腺腫(良性腫瘍)→境界悪性腫瘍→粘液性がん

起源の謎

卵巣には元々、粘液を作る腺(せん)が存在しません。胃や大腸などの消化管の細胞がなぜ卵巣で見つかるのかは、まだはっきりわかっていません。胃がんや大腸がんからの転移ではないかという説もありますが、粘液性がんに対して消化器癌の治療薬を用いた臨床試験では有意差が証明されていません

予後の予測

粘液性がんは異型度よりも発育様式が癒合/圧排性(expansile type)か侵入性(infiltrating type)かが予後の観点で重要なポイントです

よく見られる遺伝子変異

粘液性がんでは、KRASという遺伝子が変化していることが多くみられます

腫瘍の大きさと転移の少なさ

  • 片側の卵巣に10cm以上の大きな腫瘍を作ることが多く、30~40cmととても大きくなることもあります
  • 比較的早い段階で見つかることが多く、リンパ節への転移は約2.6%と、他の卵巣がん(約20%)よりかなり少ないです

症例の少なさと治療への影響

  • 日本人やアメリカ人の卵巣がん患者さんのうち、粘液性がんは約10%と少数派です。
  • 卵巣がんの治療開発に関する臨床試験に、粘液性がんの患者さんが含まれる割合も2.5%~7%と限られているため、「卵巣がん」に承認された抗がん剤でも本当に粘液性がんに奏功するかといったデータはまだ十分ではありません

標準治療(TC療法)について

  • 手術では卵巣がんの標準術式である広汎子宮全摘出に加え、虫垂を切除されることが推奨されています
  • 卵巣がんの初回治療で行う化学療法は、パクリタキセル+カルボプラチン(TC療法)が基本です
  • 粘液性がんの奏効率(がんが小さくなる割合)は12%~35%とほかのタイプより低めですが、TC療法と他の薬との比較試験を行なっても有意差が見つかっていないため、現在もTC療法が第一選択の治療となっています

喫煙が発生のリスクの1つである

喫煙が粘液性がんの発生に関係している可能性が指摘されています

 

未分化癌・分類不能腫瘍

どの細胞由来か判別できないタイプ

 

ブレンナー腫瘍(Brenner tumour)

  • まれ(約2%)
  • 多くは良性
  • 40代以降に多い
  • 手術で切除
 

卵巣がん肉腫(Ovarian carcinosarcoma)

  • 上皮性と間質性の両方の性質を持つ腫瘍
  • まれ
  • 手術+抗がん剤治療

胚細胞腫瘍

卵巣がんの 約3〜5% とまれで、10〜30代の若い女性 に多いタイプです。卵子になる細胞(胚細胞)から発生します。良性のものも多く、治療成績は良好です。

 

成熟奇形腫(Mature teratoma / dermoid cyst)

  • 多くは良性
  • 10代〜40代に多い
  • 手術で摘出
 

未熟奇形腫(Immature teratoma)

  • 悪性
  • 10代〜20代前半に多い
  • 手術+抗がん剤
  • 予後は良好
 

卵巣原発のその他の悪性胚細胞腫瘍

  • ディスジャーミノーマ(Dysgerminoma):15〜45歳に多い
  • 混合胚細胞腫瘍(Mixed germ cell tumour)
  • 卵黄嚢腫瘍(Yolk sac tumour):小児〜若年成人に多い

いずれも手術+抗がん剤が標準治療。


性索間質性腫瘍

卵巣を支える組織(性索・間質)から発生する腫瘍で、良性・悪性どちらもあります。比較的まれです。

 

間質性腫瘍(Stromal tumours)

  • 線維腫(fibroma)、莢膜細胞腫(thecoma)など
  • 多くは良性
  • 手術で治療
 

性索腫瘍(Pure sex cord tumours)

  • 顆粒膜細胞腫(Granulosa cell tumour) が代表
    • 成人型:閉経前後に多い、ゆっくり進行
    • 若年型:小児〜若年女性
    • 手術が中心、再発時にホルモン療法を使うこともある
  • その他:Sertoli cell tumour、Sex cord tumour with annular tubules など
 

混合性索間質性腫瘍(Mixed sex cord stromal tumours)

  • Sertoli-Leydig tumour(アンドロブラストーマ)
    • 20〜30代に多い
    • 男性ホルモンを産生し、声の低下・多毛などが出ることがある
    • 多くは良性で、手術で治療可能
  • その他:SCTAT、Gynandroblastoma など

原発性腹膜がん・卵管がん

卵巣がんと非常に近い性質を持ち、治療もほぼ同じです。

 

原発性腹膜がん

  • 卵巣ではなく腹膜から発生
  • 上皮性卵巣がんと同様に扱われる
  • 手術+抗がん剤治療
 

卵管がん

  • 卵管から発生
  • 多くの高異型度漿液性癌は卵管由来と考えられている
  • 手術+抗がん剤治療

境界悪性腫瘍(Borderline ovarian tumour)

  • 悪性ではないが、細胞に異常があるタイプ
  • 手術で切除
  • 長期間経過後に再発することがあるが、悪性化していない場合は比較的予後が良好
  • まれに悪性転化して再発することがある

よくある質問(FAQ)
● 卵巣がんで一番多いタイプは何ですか
卵巣がんの中で最も多いのは 上皮性卵巣がん です。全体の約90%を占め、卵巣や卵管の表面を覆う細胞から発生します。その中でも 高異型度漿液性がんが最も多いです。
「自分はどのタイプなんだろう」と不安になるかもしれませんが、診断がついた時点で、医療チームがあなたに合った治療を一緒に考えてくれます。

● 卵巣がんの種類によって、生存率は変わりますか
はい、がんの種類や進行の速さによって治療の反応が異なるため、生存率にも違いがあります。ただし、生存率は「数字」だけでは語れません。あなたの体の状態、治療の組み合わせ、医療チームのサポートなど、さまざまな要素が関わります。不安なときは、どうか一人で抱え込まず、医師や看護師に気持ちを伝えてください。あなたの不安を受け止めながら、必要な情報を丁寧に説明してくれます。

● どのタイプが一番“攻撃的”と言われますか
高異型度漿液性卵巣がん(HGSC) が、最も進行が早いタイプとされています。ただし、「攻撃的」という言葉だけが一人歩きしてしまうと、必要以上に怖く感じてしまうことがあります。大切なのは、今のあなたの状態に合わせて、「どんな治療ができるか」「どんなサポートが受けられるか」という部分です。医療チームは、あなたの状況に合わせて最善の治療を組み立ててくれます。

● まれな卵巣がんもありますか
はい、あります。頻度は低いですが、治療に良く反応するタイプも多くあります。
• 胚細胞腫瘍(例:ディスジャーミノーマ、卵黄嚢腫瘍)
• 性索間質性腫瘍(例:顆粒膜細胞腫、Sertoli-Leydig 腫瘍)
まれなタイプと聞くと不安になるかもしれませんが、「まれ=治療が難しい」という意味ではありません。それぞれに合った治療法が確立されています。


もっと知りたいときは

徐々にではございますが、症状・ステージ・グレード・治療方法などをまとめた情報ページを準備していく予定です。
ただ患者さんはさまざまで「知ることで安心できる」タイプの方もいれば、「必要なときだけ知りたい」タイプの方もいます。どちらも大切な選択です。あなたのペースで、必要なときに、必要なだけ情報に触れてください。