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ovarian cancer patients support group,SMILEY

スマイリー代表のつぶやき


TBSドラマ ブラックペアンでの治験コーディネーターの描写について

2018年05月03日

5月2日に一般社団法人日本臨床薬理学会がTBSで現在放送中の「ブラックペアン」に対して抗議文を出されました。
https://www.facebook.com/jscptkoho/posts/419004868578254

私たち卵巣がん体験者の会スマイリーが活動を開始したきっかけは「再発卵巣がん」の治療薬として世界数十カ国で承認されていた「ドキシル」「ジェムザール」「ハイカムチン」の日本での早期承認を求めて署名活動をするということでした。
医療の素人であるただの主婦である私が代表になり、当然のことながら薬がどのようなプロセスを踏んで承認をされるのかなんてことは全く知らず、そんなときに婦人科がんの臨床試験に携わってるCRCさんが活動の応援をしてくださり、その方から学びの場を紹介してもらったり、ときには仕事が終わった後にわからないところを教えてもらったりして厚生労働省に私たち患者もきちんと薬事制度や薬のことを理解してお願いしているんだと説明できるよう支えてくださいました。

 

その後、延べ15万人もの署名が集まり、3つの薬は2009年4月、2011年2月に薬事承認を勝ち取り現在患者さんたちが治療に使っています。
 
国は、海外で治療薬が承認されているのに日本では使えない「ドラッグラグ」問題をなんとかしようと、まずは国の承認審査体制について人員を3倍に増やすなど公約しいまや承認審査の期間については海外と遜色がないところまでよくなりました。
また承認前の治験の段階で例えば製薬企業がいろんな理由で開発に乗り出さないお薬に関して「学会」「患者会」などの要望を踏まえて専門家で協議し製薬企業に開発を求められる「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を2010年2月に発足。
この会議に開発要望が出された100以上のお薬が患者さんに届けられました。
私たち卵巣がん体験者の会スマイリーも、前出の「ジェムザール」「ハイカムチン」に加えて「アバスチン」「エトポシド」「タキソールの毎週投与法」「デカドロンの剤型変更」をこの会議に申請し必要性が認められいま治療に用いられています。
他にもどうしても企業が開発に乗り出せない薬については医師が主導となり治験ができるようにしたり、またそういった研究者が国と治験に関する相談をするのに企業のような高額な相談費用を払えないことから「薬事戦略相談」といった一定の時間など条件はありますが無料の相談も実施するようになりました。
その他、拡大治験や患者申出療養など説明したいことは山ほどありますが、どんどんそれていくのでここまでにします。
患者さんにお薬が届くようにゆっくり、ゆっくりではありますが国は変わってきています。

さて、そんな薬の開発を医療機関側でサポートをするお仕事にCRCという職業があります。
ドラマの中では治験コーディネーターとして描かれています。
忙しい医師にかわって、治験について研究に協力してくださる方に説明をしたり、質問に答えたり、サポートをしたりすることに加えて、院内で治験が正しく安全に速やかに実施されるよう医療スタッフと調整をされること、また患者さんの記録をきちんと行いときには報告を行い改善を行うことなど幅広いお仕事をされています。
治験コーディネーターのみなさんはブラックペアンのホームページに書かれているような「企業側」に属していません。
医療機関で、研究協力者に治験について目の前の研究協力者のことを第一に考え、メリットもデメリットも十分な理解をした上で同意していただけるよう日々考えておられます。
そして、研究協力者が院内で安全に、安心して治験に参加してもらえるように医療スタッフと調整をしっかりされています。
また治験によっては患者さんに予期せぬ副作用などが生じたときに迅速に対応できるよう24時間直通の電話を持って夜中でも対応をされています。
決して「企業側」ではありません。
日本病院薬剤師会などのCRC養成講座になんども登壇させていただいていますが、休み時間などは「こういうときはどうしたらいいですか」と真面目に質問されて来られる方が多くて、模擬同意説明のときも、講義をふまえて目の前の研究協力者さんの理解度に合わせて話をする工夫をされたり、予想される副作用を一つ一つ説明をされている姿は毎年胸を打たれます。
そんな人たちの仕事を貶めるような、また心を折るようなドラマはとても残念です。
抗議をしてくださった一般社団法人 日本臨床薬理学会に心から感謝申し上げます。
 
そしてなによりも、この国の薬の開発の遅れは、現在は多くの場合は「治験に取り掛かるまでの遅れ」であると言われています。
私たちスマイリーはそのこともふまえて「研究協力者になる患者さんに対してより治験や臨床試験を理解してもらいたい」と取り組みをしてまいりました。
「理解してもらいたい」であり「研究協力をしろ」ということは言っていません。
お薬が開発されるためには、「いま病と向き合っておられる患者さん」に協力をしてもらって「未来の患者さんのためより有効で安全なお薬を作っていく」ことになります。
だからこそ、研究の対象に選ばれた患者さんには「予想される効果」も「予想される副作用」および「予期せぬこともある」ことを十分理解をした上で、自発的に同意(もしくは辞退)してもらうことが大切だと考えています。
そのときに、断っても不利益が生じないことを理解し、また治験に参加しなかったときにはどのような代替手段があったかなども理解をしてそれでも協力しようかなと思ったら協力してもらえれば、「治験と聞いて怖くなって説明を受けませんでした」ではなく「治験といわれて説明を聞いて家族とも相談して決断した」と言ってもらえることが少しでも薬の開発の未来に協力できることではないか。
ドラッグラグ問題に苦しんだ私たちだからできる取り組みではないかと思い、取り組んでまいりました。
 
2013年からは欧米で活発に展開されている婦人科がん臨床試験を応援するグローバソンジャパンに協力、世界の卵巣がん治療成績向上を目指そうと世界卵巣がん連合にも加入しました。
また私個人の取り組みとして北里大学白金キャンバスで10年間開催された「ナースのための臨床試験セミナー」に患者さんをお誘いし一緒に勉強したり、毎年のように患者さん向けの臨床試験の勉強会を行なってまいりました。
 
ドラマの中では高額なお金を治験コーディネーターが支払うようなシーンも描かれており、こんな歪んだ世界がと研究協力者さんが不安に思われたり、はたまた周囲が治験は危ないよ!などと阻止するようなことがあってはならないと思います。
治験に歪んだイメージを与えないよう、現在協力している患者さんが不安にならないよう配慮をお願いしたいと思います。
 
個人的には、TBSのコウノドリとかとても丁寧なドラマで大好きだっただけにとても残念です。

 


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